最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2623号 判決 1950年3月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人桜井紀の上告趣意第一点について。
本件電話施設は所管庁の承認を得ないものであることは原判決の確定するところであって、右施設行爲は電信法その他の法規に触れる違法のものであるとしても、他人所有にかかる右施設に属する器物を損壊したものは、刑法第二六一條器物損壊の罪にあたるものといわなければならない。かゝる場合においても、右器物は同條にいわゆる他人の物に該当することは勿論であるからである。論旨は理由がない。
同第二点について。
原判決は、被告人判示会社所有の電話施設の電話線を端子の部分から引抜いて右設備(器物)を損壊したものであると判示し、器物の物資的損壊を認めたものであることは原判文上あきらかである。論旨は理由がない。
同第三点について。
原判決の説示によれば被告人は本件電話器具を損壊し、よって右電話施設の効用を阻害したことは明瞭である。それ以上に、損壊の程度若しくは原状の回復が可能であるか否かを判決に示す必要はない。論旨は理由がない。
同第四点について。
原判決は、前述のごとく被告人が電話線を端子の部分から引抜いて、設備(器物)を損壊した事実を認定しているのであって、相当の財産上損害を与えたことは明瞭である。所論のように、本件損壊行為は、その損害が微少のために可罰行爲に該当しないということはできない。本論旨もその理由がない。
よって、刑訴施行法第二條、旧刑訴第四四六條に從い主文のとおり判決する。
右は、全裁判官一致の意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)